〜 視点を変えればいつだって新しい日々(07) 〜



2010年12月下旬
 

「 白くなってしまいたくて 」


そんな言葉とともに雪山へ入っていったのはちょうど1年も前の話。

1年間、働き続けて、働き続けて、結局ここへ戻ってきてしまって。


12月30日。

冬期通行止めの林道から雪の降り続く中、歩き始める。

連日の寝不足と、2カ月間、朝3〜5時まで働き続けたツケでカラダが言うことをきかない。


久々に泣きそうになりながら一歩、また一歩と登っていく。


毎月150時間以上の残業をこなし、

社長や有名タレントが出席するような記者発表の準備に明け暮れ、

イベントで慣れているはずの一発勝負にも、さすがの出席者と内容の重さに、

そのプレッシャーにつぶされそうになる。


毎日が怖くて、怖くて、逃げたくて。

それでも一歩ずつ立ち向かっていくしかなくて。

久々に仕事で人格が変わっていく。


ただ目の前の案件を上手く回すために何をすればよいか、

ただそのことだけに、これまでの経験値と現在のアタマの全てを使って、

それでもまだ足りなくて。不甲斐なくて。


その案件のこと以外、自分が何を考えているのか、

全く分からない状態が本番まで延々と続いていく。


こうやって振り返ってみても、

自分がこの2ヶ月間、何をしていたのか、

ほとんど記憶がなかったりする。


そうやって、自分の持てる全てを注ぎ込んだイベントを迎え、

前日もほぼ徹夜で詰め作業に明け暮れ、

当日は現場で走りまわりながらなんとかこなし、

大きな問題も起きず、参加者の評価も良く、

クライアントからの評価も二重丸で社長からもお礼の言葉をもらったと聞いた時、

足がガクガクと崩れ落ちそうになるような安心感に包まれて。


終わった〜 ・・・って。


感動とかそういうんじゃなくて、

ただただ、あぁ、これでもうこれ以上この案件で苦しまなくて良いんやって。


そのまま22時から別の施工現場に行き、

翌朝も別イベントの立会いをしたりと、それはもう何が何だか分からん状態で。


そんな中もらった辞令。


そんなイベント担当から、メディア担当への異動。


入社から6年、ただひたすらにイベントと展示制作を続けてきて、

得るものも多かった。

もちろん、失うものも多かった。


一発勝負というあまりの緊張感に苛まれ、

私生活でも落ち着かない状態が続くこと。

イベント屋の不規則な生活と酒の多量摂取による不健康と浪費。

コレステロール値はついに異常値へ突入。

気がつけば31歳独身カノジョなし。


全てが仕事のせいではなく、自分のせいももちろんあるにしても、

そんな笑えない状態が少しは落ち着くかもしれない。

が、そんな期待よりも、どちらかというと完全に「燃え尽き症候群」で。

イベンと終了から1週間、明日のジョーのような白く燃え尽きた放心状態が続いている。


だからこそ、雪山にくる必要があって。


動かないカラダにココロで鞭を入れながら、

雪の降り続ける中、なんとか歩き続けること4時間。

中房温泉に到着。


テレビから流れる天気予報。

日本列島に、低気圧がふたつドカン・・・と。

 

翌朝、快晴。


だが、

登り始めると吹雪いてくる。

山頂付近まで登り、

稜線にでれば風速20mの

風が吹いているとか。


ベテランの方に聞くと、

明日(1月1日)は

風速30mを越える暴風雪だと。

山小屋から一歩も出れない

どころか、

いつ下山できるかも分からない

とのこと。




まる1日、もしくはそれ以上、

山小屋に閉じ込められる覚悟で、それでも登るか。


選択の時。


いくらアタマが腐っていても、その判断くらいはつく。

正月を暴風雪の山小屋で過ごすくらいなら、

中房温泉の露天風呂も堪能したことやし、このまま下ろうと。

下山して、実家に帰ろうと。

心配ばかりかけてる親に、顔を見せよう・・・と。


そんな普通のことを、普通にすることが、

来年からの新しい生活のためにはいいんじゃないかと。

  爽やかに冬晴れた山を、

少し軽くなったココロと

下山していく。


岳」という漫画にこんなセリフがあって。


「山に捨てていいものって何だかわかる?」


「答え。ゴミと命以外全部」


抱え切れんくなったら、 山に捨てに来ればいい。

それだけで、また生きていけるかもしれんから。

もう一度、生きなおそうと思えるかもしれんから。

たぶん、大切な人の顔が浮かんだりするから。



1年間ってあっという間って言うけど、

本当にあっという間やったなぁ・・・って。


皆さんも、1年間、本当にお疲れさまでした。


来年も、よろしくお願いします。

 

2010年11月上旬
   

「 結婚式 」


高校3年+浪人1年、計4年同じクラスだった友人Mの結婚式。

史上最高にアホになった結婚式。

それはもう、騒ぐは、騒ぐわ、騒ぐわ。


新郎の高校の同級生は2人のみ。

それに、新郎の大学生の友人連中と、

新郎の大学院の友人連中とがなぜか意気投合して騒ぐわ騒ぐわ。


男はこれがあるからやめられん。


ダチのダチはみなダチ



酒が入ると特にその傾向が強い。

面倒くさいことは何もなく。


・・・翌日の二日酔い以外は。

  翌朝、

這うように別府温泉へ。

入浴料100円の竹河原温泉。

昔ながらの建築物に癒され、

別府のお湯で癒され。


ゆっくりと、ゆっくりと

芯からカラダを癒す。


温泉も良ければ魚も旨い。

ここでしか味わえないものがある。



大阪、名古屋、東京と暮らしてきて、本当の幸せってなんやろうって思う。


田舎には田舎の大変さも、もちろんあると思う。

が、同じように都会には都会の大変さも、もちろんあって。


ただ、いつまでもこのスピードに耐えられるとは・・・

今のところ、思えないくらいに疲れはじめていた31歳。

 

2010年10月中旬
   

「 雲取山 」


東京唯一の百名山


秩父側、三峰ルートを登り始める。

神社から始まる厳かなスロープを進み、

3〜4時間ほどで登れるが、間で休み休み、

コッフェルでメシを作ったり、あったかいものを飲んだり。

のんびり登る山もなかなかで。


寒くなっている山を登るのも久しぶりで。


一歩一歩、踏みしめるように登っていく。


山荘も綺麗で、

山小屋では同室の人たちとのまったりとした山話を。


山では、 何かが少しだけ変わっている人が多い。

ただ、まともではない部分を少し持つ人は、とても落ち着く。

人なんて、何かが欠けていて当たり前で。

そんな当たり前のことが当たり前じゃなくいなければいけないことの方が、

たぶんおかしいんじゃないかって思えてくるほどで。


自然の中では、そんな人の方が自然にみえたりする。


何が山を登らせるのか。

みんながこうやって山を登る理由はなんなんやろね。


って、なんかいろんなものがよくわからんくなってきてても、

結局、地平の向こうから現れる、

劇的に美しい光のグラデーションの前には、何も言うこともなくて。


 

2010年9月下旬
   

「兵どもが 夢のあと」


フットサルシューズ・・・5年
サッカースパイク・・・7年
トレッキングシューズ・・・12年

そろそろ限界かってことで・・・泣く泣く引退勧告。

これまで一緒に歩いてきてくれてありがとう って。


世代交代の波はいつでもすぐそこにあるもので。


 

新しいパートナーと、


また、

新しい道を

ゆこうではないかって。


いつでも前へ。


靴は、その一歩。

 
 

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