真っ暗な中、他に走る車もなくただひたすらにアフ・トンガリキを目指す。真っ暗な中から徐々に空が白んでくる。空が明るくなり始めた中着いたアフトンガリキは観光客も少なく、カップルが二組いるだけ。大海原とたたずむ15体のモアイ。海を背に島の中心を向いている。ここのモアイは昨日見たものたちよりも一回り大きい。モアイは後期になれば大きいのが造られる傾向にあるらしい。ラノララク(モアイ製造岩山)が近いからか、もしくは権力の誇示欲がそうさせていったのだろうと。

 
 
笑 顔


帰宅してヌアが用意してくれた朝食を食べてウチの前の木陰で休憩。やわらかく心地よい日差しを浴びて本田さんとヌアの孫プリシラとのんびり。結構仲良くなって写真を撮らせてもらった。すんごいいい子で、目鼻立ちがしっかりしてて可愛い。なんでこんなに可愛いんやろうと思うくらいカメラに少し照れたはにかみ笑いが可愛い。でもこの子も島の人たちと同じように、ヌアと同じように年をとれば大きくなってしまうのか・・・などと失礼なことを考えつつ。大きくなってもヌアのようにしっかりとした優しい母親になって欲しいなと。それはかなり魅力的なことやと思う。

午後からはアナケナ海岸とアフナウナウ、アフアチビ、アフテペウ、アナテパフを回って観光を終了。町に戻ってコパカバーナで魚尽くし。もう食えんってくらい刺身やソテーを食べつくし、可愛い店員さんと写真とってもらったりで鼻を伸ばしっぱなしの夕食を堪能。

宿に戻ると入り口にヌアとプリシラと娘夫婦が座ってのんびりしてた。言葉はそんなに通じないけど、伝わるものもあってうれしい。この大きな優しさに触れることができた。それだけでもう今回の旅に出てよかったとホントに思う。部屋に戻るとプリシラが入ってきた。でも、マサミさんのラパヌイ語とチアキさんのスペイン語がなくてはコミュニケーションが身振り手振りと辞書とメモ帳しかない。プリシラはスペイン語しか話せないので手紙を書いてもらった。後で辞書片手に必死で読解すると「あなたの旅が幸運でありますように」って。
明日がラパヌイ最後の日。

 
 
     



朝6時半に起きて、最後の観光地ラノカウに行く。鳥人儀式の村を見学し、天井画のあるアナ・カイ・タガタを見てサトウ兄弟に別れを告げる。宿に戻るとヌアが朝食を用意してくれてて、のんびり食べてるとプリシラが寝ぼけ眼のままの目をこすりながら起きてくる。こんな落ち着いた朝ももう最後なのか・・・。すごく空気ののんびりした島だった。気持ちの良いやわらかな風、そそぐ陽射し、満点の星空、そして優しい人たちにかこまれて。これだけあれば他に何もいらないと思える。会社に勤めたらここに飛ばされたい。

10時に飛行機のチェックインを済ませて町に出てみやげ物を探す。結局は何も買わずじまいで、絵葉書だけ買って実家に送っておいた。出発時刻の14時が近づいたので1時ごろに最後の挨拶に宿に戻ろうとしたら通りかかった車からベンジャミン(ヌアの息子)が声をかけてくる。「早く車に乗れ!!で、ウチで昼飯食ってけ」って。いや、もう時間もないよ・・・なんてことはこのファミリーには通用しない。時間ギリギリまでもてなしてくれる。思わず何故なんだと尋ねると「俺たちはファミリーだから」って。すごくうれしい気持ちでいっぱいになってウチに戻ると、ヌアが最後の昼飯を用意してくれ、オヤジはピスコーラ(ピスコ(蒸留酒)のコーラ割り)を進めてくれた。オヤジも陽気だ。最後の乾杯。

帰り際、ウチの外でみんなで写真を撮った。最後の一枚。


 
 
 
最後の一枚
 



ベンジャミンが空港に僕らを送ってくれ、 「俺はすぐ仕事に戻るから」とか言いながらも、僕らがいなくなるまでいてくれた。別れ際にヌアは熱い熱い抱擁と口づけをしてくれ、僕らに首飾りをくれた。ヤバイ。涙が出そうになる。何度も何度も「ムチョグラシアス(めっちゃありがと)」

こんなにも別れで心が”じんっ”としたことはない。

彼らの言葉が忘れられない。


「俺たちは家族だ」