宿の娘

朝目覚めたら頭が軽い。
コカ茶効果抜群。高山病を一夜にして消し去ってくれてた。それでも消耗しきったカラダが元に戻るのにはおそらく時間が必要で、少しヨタヨタとしながらだが朝食を少し胃に入れておく。

寒さに耐えなければいけないため、夜も昼と同じ格好で寝ていたので出発準備はラク。さほど散らかしてはいない荷物をまとめ、宿の娘に挨拶をして、この小屋を後にする。

そして、今日もまた、ただひたすらに何も無い高地の道なき荒野を、旧型のランクルが走り始める。








 
   

今日もひたすら悪路を走り続ける。スピードは60キロくらいが限界やけど、それでも揺れはすごい。ひたすらそれに耐え続けるしかない。

昼前、急に車がストップ。車を降りてみると右後輪のパンク。さほど珍しいことでもないのか、若い運転手も手馴れたもので、手際よくスペアタイヤに交換していく。そして、何事も無かったかのように、また地平線に向かって走り始める。



昼を過ぎた頃。奇形岩がそこらじゅうに現れ始める。縮尺がおかしい世界が現れる。自立してるのがおかしいほどの岩、荒野の中に突然現れる奇石。自分がどこにいるのか分からなくなる。不思議な世界に迷い込む。

 
 
 
荒野をひた走る
 
     
 
 
 
自立可能限界(右端が人間:スケール比較用)
 


再び荒野をひた走ること数時間。二度目のパンク。すでにスペアタイヤも尽き、運転手がはずしたタイヤを全員で修理する。タイヤからチューブを取り出すまでで30分くらいかかる。穴を埋め、普通の自転車の修理と同じように、穴を埋め、空気入れで一人100回ずつ空気を入れる。結局、走行可能な状態に戻るのにゆうに一時間以上を費やした。なかなか順調には前に進めない。道なき道を進むには、障害は付き物。にしても、降り注ぐ高所の直射日光、薄い空気、なかなかハードな道。

 
 
 
スペアタイヤも尽き、手動で修理する(一人100回ずつ空気入れ)
 

再び走り出したランクルが沼地に差し掛かる。これまでにここを通った車達の轍であろう穴が水溜りを作る地。ここまでくれば今日の宿まであと少し。轍のない場所はいつ沼にはまり込むか分からず危険が高いため、その轍をなぞるように走り続ける。しかし、危険が少ないとはいえ、轍のあるところはへこみも大きく揺れも大きい。

     
 
 
 
轍はやがて道標となる
 

ガクガクと揺れる続ける車から見える景色が動かなくなったのは、日も暮れる少し前。
ある轍を越えられずにはまり込んだ。何度試してもはまり込んだ後輪が抜け出すことが無く、完全に立ち居往生。

仕方なく、 バイクで参加していたトルコ人が今日の宿まで助けを呼びに行ってくれた。1時間後・・・日も暮れ始める頃、運転手の父親の運転するこれまた古いランクルが迎えに来た。ワイヤーを通し、親父のランクルが轍にはまった息子のランクルを引きずり出す。

すでに日は沈み、その沈みきった太陽が最後に赤く空を染め上げる頃、やっと本日の宿に向けて車は動き始めた。

道の無い国境越えってのがどれだけ過酷か。

明日はウユニ塩湖。