
7:30起床。
まだ夜も明けぬ中、準備を済ませて「PAMERA TOURS」の前に集まる。国境越えはドイツ人が3人、トルコ人1人、イギリス人2人と、すぐに分かれることになるオランダ人カメラマン1人とブラジル人2人・・・日本語忘れそ。
ずいぶん体調も良い・・・が、出発して数十分、車の調子がおかしくなる。周囲は真っ直ぐに道が続く以外、360度何も無い。ただ広がる大地と大空。そんな中でガイド運転手は僕らを車から降ろして言う
「人と荷物が多すぎて重いので動かない。坂を上るまで降りて歩いてくれ・・・」。
・・・
全員車を降りて歩く・・・
ジリジリと肌が焼けていくのが分かる。
標高2500mを超える高地・・・キツイ。
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「この道の先にある世界を観に行こう」
(第7回全国総合写真展:佳作) |
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入国管理事務所 |
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そんな過酷な道を経てなんとか国境に着く。ただの小さな小屋で入国手続きを済ませ、車を旧型のランドクルーザーに乗り換えてボリビアに入る。この辺からフラミンゴ、ビクーニャやリャマをよく見るようになる。また、ここでは塩湖が特別なのではない。そこらじゅうにある湖がほとんど塩湖だったりする。干上がって塩が表面に出ているものだけでなく、水が張っているものも。それでも普通の湖とは水面の色が違う。白濁してたり青みがかっていたり、反射が大きかったり。塩湖の発生はプレートの衝突や隆起とかで盛り上がったアンデス山脈の生成時に、くぼ地に残った海水が年月を経て干上がったものなんやと思う。それもスゴイ量で。今日見ることができたのはその中でも小さな方。
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初塩湖 |
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ところどことに間欠泉も見られ、大地がまだ生きているのを感じる・・・
そんな大地の生命力にあてられたのか、自分の生命力は黄色信号。体調が急変し、頭がズキズキして立っていられなくなる。3000mを越え、高山病が再びカラダを蝕む。
ある間欠泉で止まったときには完全に動けなくなり、車から出れない。後部座席でうずくまり、息をするのもしんどい。昨日から負けっぱなし。自分の頭の中に、孫悟空の頭の輪っかが付いてて締まりっぱなし。
意識が朦朧としたまま本日の宿に着く。
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小屋では倒れこむかコカ茶を飲むか |
それでも広がる荒野は美しい |
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何も無いところにぽつんと一軒立つ宿。あまりにも周囲に何も無い。この国境越えツアーのためだけにここにあるのではないかと思いたくなる。シャワーも無く、トイレはめちゃめちゃ汚い。ガスはプロパンであるだけ。電気はあまり無いらしく、全体に薄暗い。そんな中でも、毛布に包まってじっとしてると少しはマシになる。ただひたすらベッドに倒れ続ける・・・ヨタヨタと起き上がってコカ茶を作るのが精一杯。ここのコカ茶は乾燥させたコカの葉をそのままコップに入れてお湯を注ぎ、スプーンで葉をつぶし、砂糖を加えて溶かす。ただそれだけのもの。ちなみにコカはコカインの生成する前の原料なのでもちろん日本持込すると両手に手錠がかかる。それでも、ここでは自分の体調を維持してくれる大切なお茶。強烈な利尿作用がカラダの循環能力を上げる。何度も何度も夜中に起きてトイレに行く。
極寒の外にトイレがある。ふと空を見上げると・・・星が綺麗。いや、綺麗なんてモンじゃない。ちょうど新月で月明かりも無い。これまで富士山、アルプス、イースター島・・・と、どこも星は綺麗やったけど、今ここに広がる夜空は別格。高度3500m以上、周囲に空気を汚すものは何も無い大平原で周りに電気などひとつも無い真っ暗闇。天の川は、「星が多くて筋に見えるから天の川」なのではない。天の川が天の川として一本の太い線として頭上に延びる。真っ黒な空に蛍光塗料をバケツで撒き散らしたような星空。もうこんな星空は一生見ることはないかもしれない。ずっと覚えていたい。極寒の中で高山病に苦しみながらも見たこの星空。星空ってのはこういうものなのだと。
自分がちっぽけな一人の人間であるおかげで、この偉大さを感じれるのだと。

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