2001年3月8日(日)
ー寝台ベッドー
手前がバックパック。とても狭い。

列車に乗り込む。真中の通路をはさんで高さも長さも幅も小さいベッドが並んでる。ありきたりな言葉だけどワクワクしてる。シンガポールを出発して1時間。出入国カードの記入も終わってそろそろ寝ようとカーテンを閉めてベッドにもぐり込んだら車掌にたたき起こしに来た。シンガポールを出国してから1時間でもうマレーシアとの国境についたらしい。見回りに来た人に「出入国手続きだよ。しらねーのか?」って感じで追い出された。荷物も置きっぱなしで、パスポート・出入国カード・財布だけ持ってのそのそと外に出る。そういえばさっき放送で何か言ってたなぁとは思ったけど(おそらくマレー語で意味不明だったし)まさかこんな風に手続きがされるとは思ってなかった。まだ初の海外一人旅3日目で警戒心が強いので「置きっぱなしの荷物が誰かに荒らされたらどうしてくれるんやろ」とか思いつつ「まぁ、なんとかなるっしょ」と、駅舎へ向かう。「何も知らない旅人は言う通りに動いてれば間違い無い」⇒「そんなに悪人ばっかじゃなく、いい人」⇒「騙された時は騙されたときで仕方ないわ」って思う。それよりも警戒しすぎて人の親切を疑うことをしたくなかった。(←後から分かるが騙そうとしてる人はそれなりに怪しい。理由が無いのに異常に世話やこうとしたりね。結局日本に外国の人が旅行にきて自分ならどこまで親切にするかを基準にすればまず大丈夫。それ以上は疑うべきかも)
真っ暗な中にぼやぁっと浮かぶ駅舎に向かう。様々な人種の人に混じって手続きを済ませるが、終わっても外に出れるわけではない。一応セキュリティーを考えてるらしく、全員が終わるまで車両に戻れないようにしている。全員が終わってベッドに戻り、今度こそ眠りに付く。



起きたらその車両には誰もいない。列車は止まってる。「ん?乗り過ごしたんかなぁ・・・」急いで荷物をまとめてると車掌が来て「まだいたのか。早く降りろ!」って言う。「ってか、ここどこやねん」とか思いつつ駅のインフォメーションで聞くとどうやらここが『クアラルンプール』らしい。現時刻朝の5時半。とりあえず困るのが『お金』。シンガポール駅で両替しとくのを忘れてマレーシアの通貨『RM(リンギット)』を一銭も持ってなかったから近くのホテルのロビーでめちゃめちゃにボラレつつ両替。ちょっと気を抜くとこんなこともある。通貨が無ければ無一文に等しいんやから気をつけんとね。なんとか少しやけどお金もあるし、朝ご飯でも食べようと『A&W』に入る。隣に座ってた日本人(24歳・東北大学院生)と、街が動き出すまで話し込む。こんな朝早く着いてもらっても困るもんです。どうもその人の話やと『ペナン』という島がのんびりできていいらしい。そういえば沢木耕太郎の深夜特急で彼が数週間滞在した島の名前がそんな感じだったはず。重い荷物を持ち歩くことに疲れていたのでこうなったらこのままこの首都を通り過ぎてそこまで行こうかと思った。いや、一人旅において『思った』は『そう決めた』と同じ意味をもつので、情報をくれた彼に礼を言い、その足で駅のチケット売り場に向かう・・・が、そんなに金が無いので、とりあえず銀行へ行こうと地図を広げていると20代後半の男女が話しかけてくる「私の妹が今度日本に働きに行くから彼女にいろいろ日本のことを教えてあげてくれないか?招待したい。ぜひウチに来てくれ。ご馳走するから」って。『歩き方』に載ってたとおりの詐欺の手口。家に連れて帰ってトランプゲームで賭けをして楽しみ、いかさまの手口を教えて一緒に今から呼ぶ金持ちの友達を騙さないかともちかけてくる。で、掛け金が大きくなった瞬間に違うイカサマで負けてぼったくられるパターン。あきれてため息が出てくる。10分ほど粘って帰っていったが、長時間の移動で疲れているとこからさらに疲れさせるには十分だった。



モスクで祈る男
ペナンへ行く決心をしてるので宿も取ってない。当然、重いバックパックを背負ったまま歩き出す。まだ朝早かったのでモスクでのんびり寝てると豪華観光バスから日本人集団観光客がぞろぞろとでてくる。みんなきれいな服に身を包み、ブランドのちっちゃなかばんをさげている。あきらかな侮蔑のまなざし。「へぇーへぇーすいませんね、汚い格好で」って卑屈になりそうになる。服は3日着替えてないし、こんなでかいリュックを抱えてるとやっぱり目立つ。記念写真を撮ってるカップルの横を通り過ぎ、街へ向かうと日本人に話し掛けられる。彼もRMに両替したいらしく、一緒に銀行を探す・・が、どこも休み。どうも聞いた話によると「イスラムの休日」らしい。仕方ないからレートが悪いホテルの両替を利用する。昼食をご一緒し、楽しいひと時を過ごす。彼はこれから内陸に向かうらしい。たった数時間の出会いだったがいい出会いというのもある。行き先が別ならばそこで別れる。彼を見送って再び一人になり、がんばって観光(ツインタワー・チャイナタウン・・・)していたが、ヘロヘロになった体が悲鳴を上げている。肩がズキズキしてくる。歩きすぎで足が張ってくる。まだ夕方4時だったが駅へ向かい、チケットを購入すると、もう一歩も動く気になれなかった。出発まであと5時間。急激に睡魔が襲ってくる。荷物を抱きかかえるように眠りに落ちてしまう。



2時間も寝ると少しは回復するようで、妙にすっきりした気分になる。(汚い話で申し訳ないが)ちょっとトイレでも行っとこうと入ったトイレがすごい。そこに『紙』などなく、ホースが一本伸びていて、その先には取っ手が付いている。握ると水がぴゅーっと出るようになっていて、それをお尻に吹き付けつつ手で汚れをこすり落とすらしい(昼に会った彼が詳しく教えてくれた+「歩き方」参照)。「モノは試し」(←っていうかこんな時じゃないとできない)と思い、トーレットペーパーを持っていたが挑戦してみると、これがまた快感っ!これはヤバイ。紙で拭いてたのとは比べものにならないぐらい爽快(くせになると困るので後にも先にもこのやり方でやったのはこの時だけですが)。一度やる機会があればぜひ挑戦してください。おすすめです。