あさ9:00起床。久々のベッドでゆっくり寝たおかげで体も気持ちもすっきりしていた。トモは朝早くから隣のランカウイ島にフェリーで渡って行った。隣もきれいな島らしい。さて、今日はサボろう。サボるって表現も少し変やけど。日本で働いてらっしゃる人から見たら「おまえは毎日リゾートやないか!」って言われてもおかしくない状況やからね。毎日が日曜日。でも今日は特別休み。何にもせずにビーチでのんびり昼寝でもしとこう。ネットカフェで親と友達にメールを送り、商店街をひやかしつつ帰ってくる。宿の隣にある洗濯屋さんに服を出し、しばしお昼寝。今日もペナンは天気がいい。窓から差し込むやわらかい日差し、天井でファンがゆっくりと回り、子供のはしゃぐ声が遠くで聞こえる。どこか別の特別な世界に入り込んだような穏やかな気持ち。ここが極楽だといわれてもすんなりと納得できそう・・・

そうは甘くないのが旅のいいところ。サボることすらすんなりとうまくいってくれないもの・・・。コトの始まりはお昼過ぎ。軽い睡眠とおいしいお昼ご飯のおかげでなんとなくちょっとやる気になって、自転車をレンタルしてちょっとビーチまで行こうと思った・・・このビーチが遠かった。地図上では往復15Kmだが実際道は曲がりくねって、しかも迷いまくってたおかげで思わぬ重労働。途中でやめときゃよかったんやけど、基本的にチャリダーなため、一度こぎ出すと止まらない。しかし、自転車だからこそ見えてくるペナンだってあるのです。こぎ始めて30分。中心地から遠く離れた集落に迷い込んだとき、そこに満ちていたのは腐臭だった。観光客が来ていいところではなかった。楽園のようなこの島にもこんな面があったのだと愕然とする。何をするわけでもなく海岸線にたたずんでいる男に道を尋ねたら「お前は学生か?」と聞かれた。昨日から・・・いや、この旅行を始めてから何回も聞かれたこのセリフ。僕が若く見えるせいもあるのだろうが、おそらくその質問の真意は『なんで学生が海外旅行なんて贅沢なことができるんだ』ってトコだろう。実際昨日のタクシー運ちゃんには「マレーシアでは何年働いたって海外に旅行することなんて出来ない。それが日本の学生ならバイト代でここへ来ることが出来る。うらやましいかぎりだ」って言われた。確かに物価の違いからみてもその通りだが、日本がここまできたのにはそれなりの理由がある。高度経済成長期、「WORAHOLIC」と言われても働きつづけてきた。自分はその恩恵をあずかっているに過ぎない。「学生がなぜ?」と言われても、「親父の世代ががんばった」としか言えないし、それ以上のことは分からない。答えようの無い質問にうんざりする。

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宿のオヤジはイスラムの
祈りを見せてくれた |
車がびゅんびゅんと通り過ぎる道を必死にペダルをこいでいると≪ガチャ≫っといういや〜な音が足元に響く。体勢が崩れて自転車が傾く。降りてみてどうしたのかと思ったらペダルが取れて道に転がっている。チェーンがはずれてたのではなくペダルが!!ネジ穴がつぶれていてうまく入ってくれない・・・お手上げ。しかし、もう歩いて帰れる距離ではない。ヤバイ。途方にくれながらチャリを押して歩く。来た道を戻っても当分なんの店もなかったハズ。こうなれば、町が見つかるまで前に進むしかない。トラックが迷惑そうに脇をすり抜けていく。絶望感に打ちひしがれながらトボトボと歩くこと30分。前方にガソリンスタンドを発見した。店の中のおばちゃんに「自転車が壊れたんだけど道具を貸してくれないか」と尋ねると追い払われた。『せっかくジュースとお菓子を買ったのにと』思いつつ外に出るとガソスタのおじちゃん(おそらく亭主)が寄ってきて「どうしたんだ?」と聞いてくる。ダメもとで助けてくれと懇願すると、彼はだまって自転車を奥に持っていき、ガチャガチャと自転車を修理し始めた。無愛想なオヤジだがその優しさがすごくうれしかった。やはりペナンはいい人が多い。来て良かった・・・ただ、ビーチについたら雨がパラパラと降り始め、急いで帰路につくことになってしまった。いったい今日は一日なんだったんやろうかと、ちょっとくやしかった。骨折り損のなんとやら・・・。

帰ってきて水シャワーを浴びる。まだトモも博美さんも帰って来てなかったので一人で夕食に出る。幸い雨はやんでいたし、借りている自転車もまだ返さなくてもいい。ちょっと遠かったが屋台街まで行くことに決め、早速チャリをこぐ。こりない男。この日の目標は美味しんぼに載っていた《ペナン風お好み焼き》を食べること。屋台の間を探し回り、やっと見つける。簡単に言うと「イカ焼き」の「牡蠣」バージョン。これがうまい。なかなか希少価値が高い。まぁ、名物と言うほどのもんでもないらしい。次に、これぞマレーア名物「サテー」を食べようと店に入るとここでドシャ降りの雨・・・しまった!!宿の近くにしておけばよかったと思うが、もうすでに後の祭り。仕方ないからのんびりしてたら《マレーシア人(27才・コンピューター会社勤務)》に話し掛けられそのまま2時間、アジア経済やマレーシア・タイの観光地について論議したり、隣の日本人のお姉ちゃん達に話し掛けたりしながら楽しく過ごす。結局雨はやまず、突っ切って帰ることになったけど、こんなに楽しいことばかりでええんやろか。そう思いつつ宿に帰り、トモと人生につい語り合いつつ、疲れた体を横にした。
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